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ぽじしょんとーく😈

過酷すぎる角界のヒエラルキー

約5分

過酷すぎる角界のヒエラルキー

角界では暴力問題や協会のゴタゴタが相次ぎ、非常にきな臭い感じが続いていますよね…

相撲はこの国で1,500年以上続く国技のようなものですが、それに付随する伝統文化の保存とそれらの現代社会への適応は相反する部分も多いので、双方を同時に実現することはなかなか簡単なことではないのかもしれません。

とは言え、「かわいがり」のような行為のどこまでが教育や躾なのかを考えると、感情論や精神論を抜かして、ここは日本という法治国家なわけですから、伝統だろうがなんだろうが暴力行為は暴行罪であり、場合によっては傷害罪という歴とした犯罪行為であって、決して正当化されるものではないかと思います。

また、ガチのスポーツ社会全般に言えることなのかもしれませんが、問題の本質は厳しすぎる上下関係のような縦社会の存在にあるわけですが、角界はさらに、ただの先輩後輩の上下関係を超えて、番付次第で日常生活に影響が及ぶような構造(いくら入門が先の年上の先輩だろうが格上の後輩のためにはメシをつくったり、風呂の世話などをしなければならいような構造)になっていることが、エグさを増しているような気がします。

これがボクサーだったら、格下のチャレンジャーが格上のチャンピオンに向かって「お前、必ずぶっ潰してやる!!」とビッグマウスをしたところで何の問題にもなりませんが、角界でそれをやったら追放されるわけで、これらは似て非なるものです。ボクシングのヒエラルキーには主従関係は存在しないですが、角界のそれには絶対的主従関係を含みます。

先日の貴乃花部屋の貴公俊(たかよしとし)が自分よりも格下相手とはいえ、仮にも自分よりも先に入門した兄弟子に対して暴力を振るってしまった事件でも明らかなように、番付はただの順位の差ではなくカースト(身分制度)のような色を帯びています。

ではなぜ、角界とりわけ大相撲の番付はカースト化するのか?

これは、相撲が古くから神事とされてきた背景に答えがあるのではと考えます。角界のヒエラルキーの最上位である横綱は神事の側面では「神(の依り代)」扱いになるわけですが、格下の者から見れば、格上の者はより「神」に近い立場なので、年齢に関係なく、絶対的存在となりうるわけです。それこそ入門が先の年上の兄弟子であろうが、時には弟弟子の付き人として服さなければならないこともあるわけで、こういった慣習も相まって、番付はただのランキングではなく、上下変動の可能性こそあるものの実態は番付の神格化を通してカーストに似た色が帯びてくるのではないでしょうか。

そこで、横綱を頂点にどうのようなヒエラルキーが形成されているのか、改めて下図にまとめてみました。

角界のヒエラルキー(番付)
図:角界のヒエラルキー(大相撲の番付)

 

細かくは序ノ口から横綱までの合計10階級+前相撲(番付外)で、大区分としては、十両以上が「関取」と呼ばれ、それ以外は力士養成員に位置づけられています。また、中区分としては「関取」の中でも前頭以上が「幕内」と呼ばれ、大関・関脇・小結は「三役」と呼ばれたりもします。

また、それぞれの人員数としては、頂点に君臨する横綱は不在でも構いませんが、大関は最低1名の原則2名(1名×東西)、関脇・小結は各2名(1名×東西)が目安とされています。その下の前頭は32名(16名×東西)、十両は26名(13名×東西)、さらに力士養成員である幕下は120名(60名×東西)、三段目は200名(100名×東西)の定員が設定されており、序二段は定員なしの約200名、序ノ口は定員なしの約50名が在位しています。

角界のヒエラルキーは、重量別なわけでもありませんし、格闘系スポーツにしては、とんでもなく裾野が広いピラミッド構造なわけです。

勝ち上がるにはあまりにもタフな階層構造に、宗教的側面である神事の性質や1,500年の伝統という特殊事情が重なれば、暴力すらも正当化されてしまうような風土が出来上がってしまっても、まったく不思議ではないです。カーストのような色を帯びた過酷すぎるヒエラルキーが生まれてしまうわけです。

さらに力士は、自分が所属した部屋は生涯移籍することは許されません。どんなに相性が合わない部屋であっても。そして、相撲の取組は部屋別総当り制なので、必然的に部屋には村意識が芽生えますし、その狭い村の中で角界の定めであるカーストに従って生活をしていくわけです。四六時中、序列に従って格上の顔色をうかがいながら生きていくわけです。繰り返しになりますが、ボクシングであれば、そんなボクサーはいないと思います。

最低限、力士には他のスポーツのFA権のような権利を与えるなどして部屋間の移籍くらいは認めるべきですし、それに伴い、部屋別総当り制ではなく東西制で取組を行うなどの構造改革をした方がよいかと思います。もちろん、付き人制度なんかも破棄して、付き人は格下力士がするものではなく、ひとつの職種としてプロを雇えばよいと思います。とにかく、番付から権力を剥がし取り、スポーツの世界での健全なランキング、言い換えれば、ただのランキングに是正していくべきかと思います。

角界の組織構造がスポーツのそれではなく独裁国家や宗教のようなシステムなので、一ファンとしては普通のスポーツに近づいていってもらいたいと思いますし、もっと自由で開かれた多様性のある世界に変化していってもらいたいなと思います。めちゃくちゃチャラいけど人気の力士とか、超合理的科学トレーニングしかしないけど全勝の力士とか、EDM聴きながらガム噛んでトレーニングしている横綱とか、そういう毛色の違う力士が少しはいてもいいんじゃないの?、みたいな。

なんにせよ、角界のヒエラルキーは過酷すぎですよ。自分が子供だったら100億%入門したくないなと。